0と1の間で善なる思春期を駆け抜けていくアニメーション、今回はタワーリングなインフェルノを怪傑猫頭巾。
前半ゆるーい下半身ネタで油断させておいて、後半は命がけのレスキューを二人の絆で乗り越える、ここまでの総決算みたいな話でした。
ぶっちゃけ作画は動かないし、シーンの繋ぎはなんかヘンテコだしで、いろいろ疲弊を感じるけども、ネネちゃんとクラりんのお話としては素晴らしい成果が見れたと思います。

いろいろ難しいテーマも裏で扱いつつ、この話の基本はガール・ミーツ・ガールです。
下腹部触ったり油っこいパロディなどもありますが、女の子二人が出会って、日常に潜む悲しいことを頑張って乗り越え、楽しい明日をつかむという、結構素直な成長物語が根っこにあります。
成長途中の二人はお互いに影響し合い、昨日は出来なかったことが出来るようになり、知らなかったことを新しく学んだりしながら、ここまでやって来ました。

お互い強く愛しあい学び合っている二人ですが、実は受け取るものはそれぞれのあり方を反映して、非対称だったりします。
ウザルと出会うまで、素質と善意はありつつも『世界平和』を手に入れる実行手段に欠けていた福音くんは、クラリオンとパンドーラデバイスという世界を変えうる手立てを手に入れる。
アンドロイドであるクラリオンは、あくまで合理的で機械的な判断を優先する傾向を持っていたけど、超善人のお人好しである福音くんと暮らすことで、非合理故に尊い『命がけのおせっかい』を学んでいく。
単純化すれば福音くんは『力』を、クラリオンは『善』を、それぞれ補い合う出会いが、二人のガール・ミーツ・ガールだといえます。(そこで終わらず、福音くんもクラリオンの冷静で無垢な判断から『善』を学んだり、クラリオンも計算を超えた『力』を福音くんのために出せるシーンがあるのが、このアニメの良いところですが)

『善』を担当する福音くんのおせっかいを、『力』であるクラリオンがサポートするというのがこれまでの基本的な関係性で、今回のレスキューもまた最初はそのとおりに進みます。
クラリオンを突き動かす電子の計算では切り捨てるべき他者を、両親の死に対する無力感というトラウマを背景に広げつつ、前向きな善意で助ける姿は、ブエル難民に食事を作ったり、囚われたアンドロイドを開放したこれまでの福音くんの延長線上にあります。
クラリオンがその善意をサポートし、火災現場をチップチューンなゲーム画面に変換したり、怪傑猫頭巾姿が可愛かったり、福音くんの『力』になる構図もまた、これまでと似ています。

しかし今回の異変はまさに命がけの大火災であり、その『力』が尽きる瞬間がやってくる。
手の届く範囲の存在を全て掬い上げたいと願う救世主願望は、常に危うさと背中合わせなわけですが、男の子を救うべく体内酸素を使い果たして気絶する福音くんは、これまで巧妙に回避していた危険性と正面衝突したといえます。
無敵のチート主人公の独善街道一直線ではなく、ラストカットで足が限界に達しながらネネちゃんをクラりんと同じように、傷を受けつつ誰かの為に体を張るシーンがちゃんとあるのは、ヒーローモノの説得力として大事ねやっぱ。
このまま進めば『善』が挫ける展開なのですが、このアニメにおける『力』は常に『善』を実行する意味合いでのみ肯定されているわけで、『力』担当のクラりんがここから頑張ります。
機械らしい冷静な判断力と揺るがない精神力で、みんなが助かる手段を考え、実行し、一番大事な人と、その人が願う『善』を可能にする『力』を正しく行使する自主性を、クラリオンは発揮するわけです。

この時福音くんの意識がなく、機械の支配者として相談や指示を行えない状態だったことは、結構注目するべきポイントです。
機械生命であるクラリオンは『善』に奉仕する従属的属性を持っているわけですが、相談し優先するべき福音は既に沈黙してしまっていて、具体的にどう行動するべきかは(電子化された行動原則のレールの上にあるとはいえ)クラリオンの自発的判断に任されています。
合理性を重視するべきなら福音の生命を重視し二人で逃げるところですが、福音が命をかけてでも実行したかった彼女の中の『善』を裏切らず、クラリオンはみんなで笑顔になるために『力』を使いこなす。
この決断によって、クラリオンという『力』に『善』という目的性が、ある程度以上宿ったいるのではないか。
融通がきかず自由意志がないように思われていた機械の人形が、プログロムされた原則を福音との交流の中で発展させ、より良い結果を掴むために必要な自発性を成長させたと言えるのではないか。
今回の話しを見ていて、そんなことを考えました。


相手のことを受け入れ、異質なものから学ぶ双方向性を前向きに使いこなすためには、その対象へのチャンネルが開放されていなければいけません。
相手の話を聞かない、相手の気持を考えない態度では、影響は発生する前に消えてしまう。
ネネちゃんとクラリンの場合、片方は一目惚れで最初からゾッコンだし、もう一方はマスター権限の書き換えから始まって、それ以上の価値観を育んだ間柄ですので、ここは常にクリアーされています。
福音くんは根が賢く素直な子供なので、クラリオンと閉鎖的な関係を作るのではなく、難民から軍人まで分け隔てなくチャンネルを開放し、様々な人と双方向に対話・影響・成長してきてますね。
クラリオンはその性質上『ネネ>世界』という偏った世界観で生きてきているわけですが、ネネちゃんが自分の素直さと開放性をクラりんに上手く流し込んでいるので、独善から上手く逃れている状態です。
今回で言えば、『市長と秘書を見捨てて逃げる』『子供を見捨てて生き残る』という閉鎖的・合理的決断を、福音くんがたしなめるシーンですね。

匿名・無名の相手に対して開かれた双方向性を重要視すればこそ、無私の人命救助という行動に二人は写れるわけですが、しかし同時に二人だけの確かな絆、『閉じた双方向性(もしくは愛)』が窮地でも頑張る根本的な力になっているのも、見ていれば判るところです。
あまりに開放的な善意はどうしても胡散臭さを連れてくるものですが、運命的に出会った少女たちの強くて個人的な関係をしっかり描いているので、彼女たちの奮闘は上滑りせず、視聴者の心をしっかりフックする。
今回で言えば急造のシェルター車両を運転する時ケーブルで繋がれている首筋だとか、クラリオンを正義のヒーロめいた外見に整えていた猫耳頭巾を福音くんが被るシーンだとか、『二人だから、みんなのために頑張れる』という構図がちゃんと絵で支えられているところが、凄く良いなと思います。
クラりんの猫耳はヴィジュアル的な印象が強いですし、さんざん『触るな漫才』で強調してきた部分でもあるので、ネネちゃんがそれを受け取って自分の要素に取り込む最後の絵面は、積み上げてきたものを感じるじんわりいい話だったなぁ……。

個人的な足場という意味では、福音くんの過去のトラウマをチラッと見せることで、不合理な『善』に何故こだわるのか、体温のある説明がされていたのも良かったです。
そういう個人的な痛みがちゃんとあってこそ、ヒーローのお話って綺麗事から半歩抜け出せると思うわけで、当時の無力感を取り戻すエゴイズムがあるとしても、今回(そしてこれまで)ネネクラがやり遂げてきたことは非常に立派なのだ。
命の危機がありつつも、銭湯ではなく救命の方に話が展開する辺り、スパルタンな方向にドライブし続けた『魔法少女』というモティーフを再構築し、ジャンルの基本に立ち返ってる印象もあるのよね、パンドラ。


エピソードゲストである市長と秘書も、『おい六道、どう見ても蒲腐じゃねーか。声優同じだし』というツッコミを入れつつ、清濁善悪有能無能併せ持つ、面白いキャラでした。
すっげー俗物なんだけど、福音くんの特殊な能力は的確に分析して驚くし、命がけで助けてくれたことは恩義に感じてるしで、市長の椅子に座るだけの器も持ってるのが良い。
しかしこれで、全世界的なグループ企業のトップにしてS級ハッカーと、治安維持軍の優秀な指揮官と、市政の中枢にコネが出来たのか……すげーなネネくん。

『善』を担当する福音くんに対し、今回も通信障害+荷電粒子砲のコンボで大災害を引き起こしていた『悪』担当のクルツさん。
火災発生のシーンが上手くつながらなかったので、彼のエゴイズム/双方向性に対して閉じられた価値観が今回の災害の原因になってる因果が、かなり分かりづらくなってた。
『ネネくんが体貼って解決してる厄介事の裏には、全部クルツの陰謀がある』っていう状況は、『クルツをぶっ飛ばせば、お話がまとまる』という全体の構図に直結している部分なです。

原作を再構築したりして話のまとめにこの構図を毎回入れることで、どういう終わり方するのか強調しているわけなのだが、今回はちょっと分かりにくかったなぁ。
惜しいところだ。

そんなわけで、この話結構倫理的に前向きで、楽天的で、人間を信じたお話なんじゃなかろうかと再確認するエピソードでした。
ギャグやパロディ、百合やお色気の要素を適度に織り交ぜつつ、このお話根っこはすごくまっとうな少女の話であり、ヒーローの話であり、成長の話だと思うわけですよ。
そういう骨格の強さ、それに支えられたこれまでの二人の軌跡を感じられて、今回のエピソードは本当に良かったです。
『怪傑猫頭巾、頑張るお姫様を救う』だもんなぁ……サイバーエイジのロマンス過ぎて素敵。
今回の話しで『女の子と女の子が出会い、お互いを大事に思い、響きあい成長しあう』お話に一つの成果が出た気もしますが、彼女たちの青春はまだまだ続く。
ここで確かめた双方向性の大事な成長が、どういう冒険に繋がるのか、とても楽しみです。